更新日:2014/10/01
「グルコサミンで膝痛が治った」、「飲むヒアルロン酸で膝の痛みがなくなった」など派手な宣伝文句で、テレビショッピングや通信販売で売られている○○○製品や×××製品は本当に「膝の痛み」に効くのですか?と言う質問を最近良く受けます。露出度の多い製品に、消費者の関心が高まるのも自然と言えば自然ですが、関心を持っている方の大部分が、前述のような疑問を持っていることも事実です。そこで、今号は膝痛それらの成分が本当に効果があるのかどうかについてお話しします。
成分の説明をする前に、簡単に関節について触れておきます。
私たちの体には手足だけでも140ほどの関節があり、関節がなめらかに動くためには、健康な軟骨が必要です。
軟骨は、その65%~80%が水分ですが、その外に、水分を保つプロテオグリカン(コンドロムコ蛋白)、プロテオグリカンを固定するコラーゲンが、豊富に含まれていて、軟骨に弾力性と緩衝性を与えています。ところが年をとるにつれて、これらのバランスが崩れ、軟骨の健康が保てなくなります。軟骨の健康が損なわれると、軟骨が擦り減り、弾力を失いますので、骨と骨が直接こすれ合うため痛みや炎症を生じます。これが、ひざ痛や腰痛となって現われます。
つまり、軟骨を構成している成分のどれか一つでも不足すると関節の故障につながるのです。
テレビショッピングなどで宣伝文句に良く出てくる「グルコサミン」、「ヒアルロン酸」、「コラーゲン」などは膝関節を始め関節を構成する成分であったり、その成分をつくる素の成分だったりするのです。
軟骨を構成する成分の働き
その働きをかいつまんで説明しますとグルコサミンは、軟骨成分であるプロテオグリカンや、関節液のヒアルロン酸の原料となり、また、軟骨の成分の合成を助ける作用があります。
ヒアルロン酸は、元々我々の体に存在する成分で、関節の中で潤滑油やクッションの役割をしています。
コラーゲンは人間の体を構成する成分であるたんぱく質の一種で、皮膚、骨、軟骨、関節など、全身に存在し、細胞や組織をつなぎ、弾力を与える働きがあります。関節の軟骨部分では潤滑油の働きをします。また、骨の形成にも深く関係があり、カルシウムが骨に定着するのを助けます。
これらの成分は、軟骨の細胞自身が作り出すと同時にその量に一定に保つ機能が有るのですが、加齢と共にその機能が低下し、体内のコラーゲンやヒアルロン酸は減少していきます。
そこで、減少したコラーゲンやヒアルロン酸を摂取することで、これらを補い関節の軟骨を再生し、膝痛や腰痛を治す。‥‥‥このような論法でテレビショッピングや通信販売では宣伝をしているようですが‥‥‥‥そう簡単にいかないのが人間の体です。
不足した成分を補えば膝に直接届くの?
我々、人間(生体)の体は、ヒアルロン酸を食べたから、コラーゲンを摂取したからといって、それらの物質が増えるということではありません。
食べたものはすべて最小限の分子に分解され、単なる栄養素として、体の隅々まで運ばれ、それぞれの細胞が、その部位に必要な物質を生成します。したがって、基本的には、ヒアルロン酸を食べたから、ヒアルロン酸のまま膝に到達するということはないのです。
関節だけでなく、何らかの疾患、あるいは痛み、不調というものが、何かが不足して起きるという現象はわかります。ただし、その不足を補えば良くなるというのはすごく理論として短絡的に思えます。
少し強引な例えですが、水分で考えてみますとお年寄りは枯れていて、赤ちゃんはみずみずしい。では、ガブガブ水を飲めば体内の水分が赤ちゃんと同様になりピチピチの肌になるかと言うとそんなことはありません。
では、不足した成分を摂取しても全く無駄なのかと言うとこれもまた、そうではないのです。
成分の有効性を示すデータも
グルコサミンやコンドロイチンは、ヨーロッパでは、すでに変形性関節症の冶療薬として認可されていますし、WHO(国連世界保健機構)が行なった研究プログラムの一つで、グルコサミンの有効性も認められています。べルギー・リエージュ大学の研究チームが行なった「骨と軟骨の代謝に関する調査」と名づけられた研究の中で、膝の関節炎症患者に1日に1500mgのグルコサミンを投与した所、症状の進行を抑制する効果があったとを報告しています。
成分の有効性を活かすのは
ここで、思い出して欲しいのが、「レディースアップ」です。レディースアップにはグルコサミンが配合されていますが、それだけが単体で処方されていません。複数の成分が配合されています。なぜ複合タイプの製品になっているのでしょう。
軟骨細胞も死亡と再生をくり返しています。そのサイクルを維持するのには、生き物として十分な栄養や酸素が供給されなくてはいけません。再生するためには、細胞が生まれ変わるための材料(栄養)が十分に補われる必要があります。たんぱく質・ビタミンA・ビタミンB群・ビタミンE・ビタミンC・亜鉛などの補給が不可欠です。
プロテオグリカンは、たんぱく質の一種で、その生成には、グルコサミン・ヒアルロン酸・コンドロイチン硫酸・ケラタン硫酸が不可欠です。グルコサミンから、ヒアルロン酸・コンドロイチン硫酸・ケラタン硫酸が作られますが、作られていく過程の複雑さを考えると、グルコサミンとコンドロイチン硫酸とたんぱく質を摂取することが最も良い方法と思えます
。
コラーゲンは、体が作るたんぱく質で、細胞と細胞の間を埋める補強繊維になっています。
コラーゲンを食べれば、体の中でコラーゲンになるというものではありません。食べたたんぱく質を材料にして体が自ら作る物質なのです。そして、このコラーゲンが弱いと軟骨に限らず、臓器全般が脆弱化してしまいます。
壊血病と云う病気がありますが、これはビタミンC欠乏でコラーゲンの劣化が起こり、体中の臓器が壊れて出血を起こす病気なのです。
また、女性は知らない間に体にアザを作ることが多いですが、これは、鉄分の欠乏からコラーゲンが劣化して、毛細血管が破れる現象なのです。
丈夫なコラーゲンを作るためには、たんぱく質と鉄分とビタミンCが不可欠です。それによって軟骨のコラーゲンだけに限らず、全身のコラーゲンも強化されるものなのです。
複合処方で成分の有効性が発揮される
単独の成分でだけでなく、複合成分ので処方する理由を解っていただけますか。単独で成分を摂ってもあまり意味はないのです。その成分の働きを助ける幾つもの成分や栄養素が必要なのです。そうした全ての栄養素は、体の中で消費されるものなので補充を待っています。常に入れ替わりが繰り返される訳ですから、必要量の栄養素を食べなくてはなりません。栄養状態が悪くなると、関節の栄養状態も低下して、当然の結果として、関節は壊れるのです。
飲んだり、摂取するだけではグルコサミンやヒアルロン酸は膝関節に直接届くことはありません。
派手な宣伝やキャッチコピーに惑わさせず正しい製品を選択する賢い消費者になってください。 効能だけを謳い、実際の成分はそれほど含まれていない製品もありますので。